昨年に引き続き、今年もクリスチャン・フォッサム先生の国際セミナーに参加させていただきました。
今回のテーマは、
「侵害受容・痛み・反射に対するオステオパシー的考察」。
少し専門的なテーマではありますが、日々の臨床で「痛み」を訴える方の身体をみていく上で、とても大切な内容でした。

痛みは「その場所だけ」の問題ではない
日々の臨床では、患者さんがさまざまな痛みを訴えて来院されます。
腰が痛い。
首が痛い。
肩が痛い。
膝が痛い。
そのように聞くと、どうしても痛みのある場所に意識が向きやすくなります。
もちろん、その部位に何が起きているのかを丁寧に評価することは大切です。
ただ、今回のセミナーで改めて学んだのは、痛みという現象は、単に「組織が傷んでいるから痛い」という一方向の話ではないということでした。
痛みは、身体の組織だけで完結しているものではありません。
組織からの刺激、神経系の反応、脳での処理、過去の経験、疲労やストレス、睡眠状態など、さまざまな要素が関わりながら生じています。
だからこそ、痛みのある場所だけを追いかけても、なかなか変化が出ないことがあります。
「侵害受容」と「痛み」は同じではない
特に印象に残ったのは、
「侵害受容」と「痛み」は同じではない
という視点です。
侵害受容とは、身体の組織に加わった刺激や負荷が、神経を通して入力されることです。
たとえば、筋肉や関節、靭帯、筋膜などに何らかの負荷がかかったとき、その情報が神経を通して中枢へ送られます。
一方で、私たちが実際に感じている「痛み」は、その入力だけで決まるものではありません。
身体からの情報に加えて、感情、記憶、過去の経験、ストレス、疲労、睡眠状態など、脳や神経系で処理されるさまざまな要素が関わりながら、最終的に「痛み」として認識されます。
つまり、痛みは単に「その場所が悪いから痛い」というものではなく、神経系全体の反応として生じている側面があります。
この視点は、慢性的な痛みや、検査では大きな異常が見つからないにもかかわらず痛みが続いている方をみる上でも、とても重要だと感じました。
侵害受容・痛み・反射をどう捉えるか
今回のセミナーでは、侵害受容、痛み、そして反射というテーマを通して、手技療法でどのような生理学的プロセスに影響を与えることができるのかを、丁寧に学ぶことができました。
痛みがあると、身体は防御的に緊張します。
筋肉が硬くなったり、関節の動きが制限されたり、呼吸が浅くなったり、姿勢や動作のパターンが変わることもあります。
それらは単なる「硬さ」ではなく、身体が自分を守ろうとする反応でもあります。
その反応が一時的なものであれば問題ありませんが、長く続くことで、痛みや動きにくさがさらに固定されてしまうことがあります。
だからこそ、オステオパシーでは、痛みのある場所だけではなく、神経系、筋骨格系、循環、呼吸、全身のつながりを含めて身体を評価していきます。
神経系・力学・循環という視点
今回のセミナーの中で特に印象的だったのが、身体を以下のような視点で整理して考えることです。
神経系のモビリティ
力学的なモビリティ
循環系のモビリティ
神経系のモビリティとは、神経が身体の動きに対して、どのように滑走し、適応できているかという視点です。
神経は単なる電気信号の通り道ではなく、身体の動きに合わせて滑走し、周囲の組織との関係性の中で機能しています。
力学的なモビリティとは、関節、筋膜、靭帯、骨格など、身体の構造がどのように動き、どこで制限されているのかという視点です。
身体のどこかに動きにくさがあると、その影響は局所だけでなく、離れた部位にも波及することがあります。
循環系のモビリティとは、血液、リンパ、静脈還流など、身体の中を流れるものが滞りなく動けているかという視点です。
循環が滞ると、組織の回復や神経系の落ち着きにも影響します。
痛みのある部位だけを見るのではなく、神経がどのように動き、組織がどのように動き、循環がどのように保たれているのか。
それぞれを分けて評価しながらも、最終的には身体全体のつながりとして統合していく。
この考え方は、普段の臨床にもそのまま活かせる、とても大切な視点だと感じました。
実技で学んだオステオパシーのテクニック
実技では、カウンターストレイン、マッスルエナジー、BLT、筋筋膜リリースなど、さまざまなオステオパシーのテクニックを通して、痛みや反射に対してどのようにアプローチしていくのかを学びました。

カウンターストレインは、過敏になっている組織や反射的な緊張に対して、身体が楽になるポジションを利用しながら働きかける方法です。
マッスルエナジーは、患者さん自身の筋収縮を利用しながら、関節や筋肉、神経系の反応を整えていく方法です。
BLTは、靭帯や関節、組織の張力バランスをみながら、身体が無理なく整いやすい方向へ導いていく考え方です。
筋筋膜リリースは、筋膜や結合組織の制限を丁寧に評価しながら、身体全体の連続性を回復させていくための方法です。
それぞれのテクニックには特徴がありますが、今回改めて感じたのは、単に「どのテクニックを使うか」ではなく、
「なぜその手技を選択するのか」
がとても大切だということです。
その手技は、神経系に働きかけているのか。
力学的な制限に働きかけているのか。
循環の改善を目的としているのか。
反射の過剰な反応を落ち着かせるためなのか。
その意図を明確にしながら身体をみていくことで、手技は単なる方法ではなく、身体を理解するための大切な視点になっていきます。
痛みの背景を丁寧にみる
痛みを訴えている方の身体には、痛みそのものだけではなく、緊張、循環の滞り、神経系の過敏さ、反射の亢進、過去の負担、回復力の低下など、さまざまな背景があります。
その背景を丁寧に読み取りながら、身体が少しでも回復しやすい方向へ導いていく。
今回のセミナーを通して、オステオパシーの奥深さと、臨床で身体をみる視点の大切さを改めて感じました。
症状だけを見るのではなく、その奥にある生理学的なつながりをみること。
痛みを抑えることだけを目的にするのではなく、身体が本来持っている適応力や回復力が働きやすい状態を整えていくこと。
これからの臨床でも、その視点を大切にしていきたいと思います。

貴重な学びの機会をありがとうございました。
ご興味のある方は、日本クラシカルオステオパシー協会のセミナー情報もぜひチェックしてみてください。
日本クラシカルオステオパシー協会
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